建築士が教える、家づくりで“決めすぎない”ほうがいいこと
家づくりというと「すべてを細かく決めて、完璧な間取り・仕様を詰め切るもの」と思いがちですが、実は“あえて決めすぎない”ことで後悔を減らせるポイントがいくつも存在します。
特に初めての注文住宅では、「生活してみないと分からないこと」や「子どもの成長・ライフスタイルの変化」によって、柔軟性のある設計が後々の満足度を高めるケースが多くあります。
この記事では、現役建築士の視点から「決めすぎないほうがいい家づくりのポイント」を5つにまとめてご紹介します。これから家づくりを検討する方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.完全に固定された間取りより、“余白”を残す設計を 家づくりで最も重要ともいえる「間取り」。
しかし、住む人の暮らし方や家族構成は、数年~十数年で大きく変化するものです。
例えば:
– 小さなお子さんが成長して個室が必要になる
– テレワークや副業でワークスペースが必要になる
– 親との同居や介護の可能性
このような変化に備えるには、「用途を限定しない多目的スペース」や「将来的に仕切れる広い一室」など、変化に対応できる“余白のある間取り”が有効です。
建築士のアドバイス:
「今の暮らしに100%合わせるより、“未来の暮らしに60%対応できる設計”が理想です」
2.細部まで選びすぎると、かえってストレスになる
注文住宅では、壁紙・床材・照明・水回りの色・素材・設備グレードなど、すべて自分で決められる自由度があります。
しかし、
– 選択肢が多すぎて迷ってしまう
– 色や素材の組み合わせに統一感が出ない
– 家族で好みが分かれて衝突する
といった“決め疲れ”や“選びすぎによる混乱”が起きがちです。
建築士のアドバイス:
「プロが提案するベースプランをベースに、“こだわりたい部分だけカスタマイズ”が満足度の高い進め方です」
3.照明やコンセントの位置は、暮らしてからの変更も視野に コンセントの数や位置、照明計画は、設計段階で細かく決められますが、「実際に家具を置いて生活してみないと分からなかった」という声も多いポイントです。
例えば:
– ダイニングテーブルの位置が微妙にズレた結果、ペンダントライトの位置が不自然
– ソファを移動したらコンセントが届かない
– 予定していなかった電化製品を買ったら足りなくなった
建築士のアドバイス:
「配線を後からでも引けるように“将来配管”を仕込んでおくと、暮らしの変化に対応しやすくなります」
4.外構(エクステリア)は“後から考える”のも手 家本体の打ち合わせに集中するあまり、外構計画(庭・カーポート・アプローチなど)がおろそかになるケースは少なくありません。
実は、外構は“住み始めてから”の生活動線や雪の状況、日当たりを見てからでも十分間に合います。
建築士のアドバイス:
「初期は必要最低限の外構だけにして、実際の暮らしに合わせて“第2期工事”として計画するのもおすすめです」
5.将来のメンテナンス・リフォームを見越して決めすぎない 家は完成した瞬間がゴールではなく、「住んでからどう維持・管理していくか」が非常に重要です。
高性能住宅やデザイン住宅においても:
– メンテナンスが難しい素材を多用して後悔
– 断熱や気密にこだわるあまり、DIYや配線変更ができない
– 建材が特殊でリフォーム時に高コスト
といった“こだわりすぎたがゆえの将来の不便”が起こりえます。
建築士のアドバイス:
「10年後、20年後の修繕・間取り変更を想定して、“触れる余地”のある構造・素材を選びましょう」
まとめ:
完璧より“余白のある家”が暮らしやすい。
家づくりは、すべてを決め切ることが成功の秘訣ではありません。
– 将来を見越した間取り設計
– 決めすぎないことで得られる柔軟性
– 暮らしながら調整できる余裕
こうした視点を持つことで、「建てたあとが楽しい家」になります。
建築士の立場から見ても、“未完成であること”を前提とした家のほうが、結果的に住まい手に長く愛されている印象です。
ぜひ、理想を追求するだけでなく、“変化に寄り添う家づくり”も意識してみてください。